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BTSの新曲「Dynamite」が全米ビルボード・シングル・チャートHOT100(以下全米シングル・チャート)の1位に輝きました。
このニュースに、世界中のARMYが歓喜し、アジア人としては、坂本九さんの「上を向いて歩こう」以来、57年振りの快挙を成し遂げたことに大興奮でした。すでに全米アルバム・チャートでは1位を獲っているBTSですが、全米シングル・チャートの1位には、特別な意味があります。そして今週、「Dynamite」は、2週連続1位に輝きました。これで彼らの全米1位の功績は、さらに大きなものになりました。この1位は、BTSがこれまでに積み上げてきた人気の上に、数多くの実力派欧米アーティストがひしめくチャート内において、BTSの音楽性、クリエイティヴな才能がついに認められ、全米全土に広がった証と言えます。
アメリカは広いです。中部に行けば行くほど、都会のムーヴメントが伝わりにくくなるのがアメリカの土地柄。シングル1位になるということは、アメリカの隅々にまで、音楽が行き渡り、全米全土のラジオから楽曲が流れるということです。現在のビルボードの集計方法は、CD売り上げ、ラジオでのエアプレイ、デジタル配信、有料ストリーミング、YouTubeの再生回数も含まれます。昔のように、何度も全米ツアーをしなければ、アメリカ全土にその楽曲、アーティストの人気が広まらない時代ではありません。新しい時代に沿った戦略で世界へと飛び出したBTSにとって、大いにチャンスはありましたが、アメリカを制覇するということは、そう簡単なことではありません。
音楽を聴く上での新しい時代を迎えた事により、楽曲が全米全土を席巻するスピードはアップしています。前述したように、昔のコツコツ型から、一気に世界を視野に入れることができるし、今やメジャー・レーベルもインディー・レーベルも区別がつかない音楽業界の中で、誰もが世界に目を向けることができるようになりました。ただし、だからと言って、全員が全員成功できるわけではありません。その中で、あえて世界に向けて戦う準備をしてきたアーティスト、音楽的に決してブレることのないクリエイティヴな才能を持っている人、努力する人、恵まれた環境に感謝する人、そういう人間性を持ち合わせている人が成功していくのは、昔も今も同じだと思っています。
今回の「Dynamite」リリースにおけるBTSの方向性に、1位を狙うために英語ヴァージョンにしたという理由はないでしょう。目標の一つとして1位はあったにしても、言葉が彼らにとって問題ではないことは、韓国語によるオリジナル・アルバムの1位が証明しています。今あえて英語にした意味は、BTSという存在が、全米全土に広がり、正真正銘のトップ・アーティストとして、歌のメッセージを届けたということなのだと思います。
「Dynamite」のヒットの要因のひとつには、BTS独特のアグレッシヴなダンス・サウンドを抑え、70’s、80’sのディスコをイメージしたポップチューンであったことも大きかったでしょう。まさにラジオから流れてきたら、思わず口ずさんでしまうサウンド。一度聴いただけで、これはすごい楽曲だと思わせてくれたポップサウンドにあります。これは、アーティスト名は覚えてなくても、曲は知っているというような、普段音楽をBGMとして聴いている大人にも届けられた楽曲だといえます。韓国から、アジア、南米、北米、欧州へとBTS人気は広がり、今や若者の流行の中心から、一般的な家庭にまでBTSの音楽が聴かれるようになったというわけです。
韓国における彼らの全米制覇の経済効果は、1521億円にもなると発表がありました。7年のキャリア、練習生時代を入れるとすでに10年超え。その努力の成果が、経済をも動かし、音楽業界に光線を放ちました。これを喜ばずにはいられないのです。